2011年9月12日月曜日

ジョロウグモ ジョロウグモトキシン 画図百鬼夜行 和漢三才図会 本草綱目啓蒙

Nephila clavata北海道を除く日本,朝鮮,台湾,中国に分布する大型の美しい蜘蛛.メスの方が大きく,オスはメスの巣の隅に居候しているように見える.メスの大きな腹部には幅広い黄色と緑青色の横しま模様があり,下面には紅色の紋がある.オスはずっと痩せ型で,褐色がかった黄色で濃色の縦じま模様がある.網は大きく、直径1mくらいのものもあるが,横糸が黄色いので光が当たると金色に光って見える.このクモは興奮性神経の伝達を司るグルタミン酸受容体を阻害する毒をもっていて,この毒を獲物の昆虫に打ち込んでその行動の自由をうばう.このジョロウグモトキシン (Joro Spider Toxin (JSTX-3) 下図) は日本の生理学者川合述史によって発見された(Kawai, N., et al. 1982. Brain Res. 247: 169-171).ただ,一匹がもつ毒の量は微量で,たとえ人が噛まれたとしても機械的障害はない場合がほとんどだそうだ.

蜘蛛の類は稲や農作物の害虫を捕食することから,古くから敬されていたが,特にジョロウグモは,その獰猛さと美しさのギャップからか,恐れをも持って見られていた.そのため,妖怪の一種,美しい女「絡新婦」の姿に化けることが出来るとされていて,鳥山石燕の「画図百鬼夜行」(最下図)では,火を吹く子蜘蛛達を操る蜘蛛女の姿で描かれている.

寺島良安『和漢三才図会』(1713頃)
絡新婦 斑蜘蛛(まだらぐも)[俗に女郎蜘蛛という〕
『本草綱目』(虫部、卵生類、蜘蛛〔集解〕)に次のようにいう。赤斑色の蜘蛛を絡新婦という。昔、張延賞という人があり、斑蜘妹に頭の上を咬まれた。一晩すると二つの赤脈が項の下を繰り心臓の前まではい、頭面は数斗ほどに腫れ、ほとんど救いようのない様子であった。ある人が大藍汁に麝香・雄黄を入れ、そこへ一匹の蜘蛛を取って投げ入れると、化して水となった。これを咬まれた処に点じると、二日して悉く愈えた。また、蜘蛛に咬まれて全身に瘡ができた場合は、好い酒を飲み、酔がまわると、虫は肉中で小米のようになって自ら出てくる、という。
△思うに、絡新婦とは俗に女郎蜘妹と称するものである。黄・黒・緑・赤の斑が美しいが・かえって醜い。毒が最も甚だしいせいである。形は蜘蛛より長く、細い腰、尖った尻に手足は長くて黒い。糸は黐(トリモチ)のように粘くて黄色を帯びており、樹枝や家の檐(のき)に網をはる。人が捕らえて打つと脆(もろ)くつぶれて血を出して死ぬ。他の蜘蛛は血を持っていない。尻は尖りその二カ所は動揺するにつれてぴかぴかと光る。けれども螢火のように鮮やかではない。老いたものはよく火を生じる。闇夜、あるいは微雨の中でたまたまこれを見ることがあるが、大きさは小さい碗ぐらいで、円くて徽青色を帯び、ゆっくりと動き、それほど遠くまで行かず、また家の檐よりも高いところへは行かない。鵁鶄(ゴイサギ)の火は遅速高低さまざまで、この点が鳥と虫とのちがいである。『西陽雑姐』(巻十四諾皐記上)に、深山に車輪ぐらいの大きさの蜘蛛がいて、よく人や動物を食べる、とある。(現代語訳 島田・竹島・樋口)


小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1803-1806)  巻之三十六 虫之二 卵生類 下
蜘蛛 〔集解〕絡新婦ハ、ジヨロウグモ(京) ジヤウログモ(同上) ジヤウラグモ(筑後) テラグモ(和州) ハタオリグモ(予州) コガネグモ(琉球) 此蛛ハ身瘠長ク一寸許、黄色ニシテ黒青赤斑アリテ美ハシ。足ニモ黒黄斑アリ。庭樹ノ間二巣ヲハリ、昼夜ムシヲ取食フ。其糸黄色ニシテ甚ツヨシ。

中国では「棒络新妇(=婦)」又「络新妇」或いは「橫帶人面蜘蛛」と呼ばれ「身体颜色美丽(=麗)」とされている.ただ,『维基百科』における記事は多くない







0 件のコメント: