2011年7月12日火曜日

ギンセンカ(1/2) Gerarde, Parkinson, Curtis

Hibiscus trionum = flower of an hour江戸時代の園芸書には度々取り上げられているが,今では殆ど一般には見ることの出来ない花の一つ.金銭花(ゴジカ)が金朱色なのに対して白いので,銀銭花(ギンセンカ),あるいは,早朝に咲いて直ぐしぼんでしまうため朝露草(ちょうろそう)と名づけられた.

まずは,英国での歴史.原産地は東部地中海沿岸らしいが,ヴェニス経由で英国に入ったからか,古くは“Venice Mallow”と呼ばれた.

1597年以前に移入されたことは,ジェラードが,“The Herball (1597)”に,「アフリカの森から愛好家の庭に移し植えられた.私の庭で年ごとによく育つようになっている」と書いている事から分かる.その「人を楽しませる美しい花」について述べた後で彼は,「八時頃に花が開き,太陽の光を受ける九時に閉じる.だからこの花は見られるのを拒否しているようだ」と言っている.この性質から,この花には〝一時間の花″,〝午前九時におやすみ〞という名前を与えられた.その後いつの間にか時間が延長されて,“正午におやすみ(Goodnight at noon)”になってしまった.ジェラードは,「アネモネではなくこの花こそが,アドニスが殺された時にヴィーナスが流した涙から生まれたものだと言ったほうがよい」と書いている.どうやら,「この花の命がはかないこと,女性が流す涙は長く続かないことを考慮すると」そうなるらしい.

また,パーキンソンも彼の“Paradisi in Sole (1629)”に図と共に,その草姿や「底に濃い紫あるいは暗紅色の斑点のある非常に優美な花」,「花の後の半透明な実」を詳しく紹介している.

現在でも米国や欧州南部で観賞用に庭に植えられ,またニュージーランドも含めて広く野生化している.

その短時間しか咲かない性質や,花の底の斑点の特異な色,膨らんだ蕾や実の形から,多くの一般名があり,英語圏だけでも上記の Goodnight at noon 以外にも,Black-eyed Susan, Bladder hibiscus, Bladder ketmia, Bladder weed, Flower-of-the-Hour, Modesty, Puarangi Rosemallow, Shoofly など多数に上る.


右図:W. Curtis "Botanical Magazine" (1792) 銅版手彩色

ギンセンカ(2/2)増補地錦抄,大和本草,絵本野山草





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