2011年4月7日木曜日

シクラメン 栽培種

Cyclamen persicum cv.Wikipedia によるとシクラメン属の植物は母種だけで28種あり,地中海沿岸地方を中心に欧州全体に分布.逆さ向きの花冠をもち,淡紅色の単生花が,長くきゃしゃな花柄に支えられている.この花柄は開花期には真っすぐ立っているが,その前後には円形あるいは螺旋形に巻くようになる.この植物の名はこのことに由来している(14世紀に現れた cyclamen という名は,「円」の意の kuklos から出たギリシア語の kuklaminos から作られた).三角形あるいはハート形の円い形の葉は,クルミ形の地下の塊茎に付着している.

古来は花ではなく,塊茎の澱粉を注目され,サポニン配糖体を含むため有毒であるが「アルプスのスミレ」などと称され,食用とされていた.この塊茎はえがらっぼく瀉下作用があるので,大航海時代以後ジャガイモがもたらされると,シクラメンを食用にする習慣はなくなった. 薬用植物としても注目され,多くの本草に記載され,描かれた.アプレイウスは著書「本草書」の中で,シクラメンを鼻に詰めると脱毛に効果があるとし,六百年後ド・パスは,「この根は,毒消しとして用いると効果があると言われる」と記したが,この植物がたいへん価値があるのは出産の際に助けになることである.とはいえ,とても薬効が強いのでターナーは,「妊娠している女性が服用しすぎると,危険である」と警告している.そしてジェラードは,偶然にシクラメンを踏んだ女性が流産するといけないので,自分が育てているシクラメンのまわりには木で柵をするという配慮をしている.
彼はまた,「細かく砕いて,小さな平たいケーキを作り,本人に知られないように食べさせると,恋するようにしむけられる媚薬になる (Being beaten and made up into trochisches*, or little flat cakes, it is reported to be a good amorous medicine to make one in love if it be inwardly taken. *trochisches:トローチ)」と言っている.しかし,J. パーキンソンは,これは単なるおとぎ話だと切り捨てている(But for any amorous effects, I hold it meere fabulous.).

日本で秋から冬に鑑賞されるシクラメンは,ギリシャなどに原生している Cyclamen persicum (Persian cyclamen) の栽培品種で,1659年ごろに英国に導入されたが,その後アメリカで実生法が発見されてからは急速に改良が進み,1870年にはイギリスとドイツで‘ギガンテウム’に代表される大輪系の園芸品種がいくつか育成された.日本での鉢物のシクラメン栽培は1921年(大正12年)ころから始まり,最初は塊茎を無加温フレームで栽培したため,2~3月に開花する早春の鉢花として鑑賞されたが,加温フレームを利用した栽培が始まった昭和30年代後半から,現在のような冬の鉢花の代表格となり,最も生産量の多い鉢植え植物となった.

家内が一昨年の秋に友達から頂いた鉢植え.花が終わって外に出された鉢に水をやり,高温の時期には土間に取り込んで,ようやく花をつけさした.蕾を着けた若い花茎は半円形を描くが,螺旋形ではない.いつもは種をつけさせないように花が終わると摘むが,今年は一つ二つ本当に螺旋を描くか,実験してみようか.

左図は欧州原産の Cyclamen europaeum = C. purpurascens,種をつけた花茎が螺旋形になっているのが分かる. Prof. Dr. Otto Wilhelm Thomé ''Flora von Deutschland, Österreich und der Schweiz'' 1885 多色石版.

シクラメン シリシウム ケンブリッジの野外で見た原生種

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