2011年1月13日木曜日

Pierre-Joseph Redoute “Le Roses”, second octavo edition (2) ルドゥテ『バラ図譜』オクタヴォ-第二版 Rosa Pimpinellifolia Flore Variegato

Rosa Pimpinellifolia Flore Variegato

ピンピネリフォリア系-ヨーロッパに広く分布するロサ・ピンピネリフォリアの変種または本種をもとに改良された一連の系統をさす。

「花のラファエロ」ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ Pierre-Joseph Redoute (1759 - 1840)は,また多色刷りのスティップル・エングレーヴィング [ stipple engraving ] (点刻彫版法)を発明し,それを植物図譜に適用した最初の人としても知られる.スティップル・エングレーヴィングは,後世の印象派の点描技法に通じる,点の集合で陰影を表現する非常に高度な技術と労力を要する彫版技法で,それによって銅版画特有の硬い輪郭線を排除し,植物の自然な姿を表現できる.

 ルドゥーテの版画作品は,その無数の点を刻んだ一枚の銅版に,様々な色の絵の具をプーペ(タンポ)などで載せ印刷し,更に,手彩色で仕上げるという,途方もない手間をかけて制作されている.「多色印刷をするためにわれわれが 1796 年に発明した工程は,独自のやり方で一枚の版に必要なインクを盛り分けることからなる.それによって(中略)水彩絵の具のもつあらゆる柔らかさと華やかさを印刷物に与えることに成功したのである.(ルドゥーテ)」*1

この技法の見事な例を『J. J. ルソー氏の植物学 La Botanique de J. J. Rousseau』 (1805) のサフランの多色銅版図譜(番外編 サフラン(1) ルソー・ルドゥーテ・ラスキン・漱石)で見ることが出来る.
*1 『植物図譜の歴史』 W・ブラント著,森村謙一訳,第14章 「ルドゥテの時代」

「バラ図譜」においてこの技法はフォリオ版ならびにオクタヴォ版の第1版に用いられた(右図,ニューヨーク公共図書館).

しかし,図譜の拡大図を見ると分かるように,オクタヴォ版の第2版以降では,黒あるいは黒灰色一色で印刷し,それに手彩色をほどこすという簡便な技法が用いられた.従って,美しさの点では価値は第1版より大分落ちる.(前記事参照)

 ここに掲げた図版はオクタヴォ版の第2版.Rosa Pimpinellifolia Flore Variegato; Variete du Rosier Pimprenelle á fleurs panachees [Rosa pimpinellifolia L. var. ciphiana] の図譜.2006年6月にe-Bayのオークションで 53.00 ドルで落札した.
 
 なお,「バラ図譜」のフォリオ版の全図譜はニューヨーク公共図書館( NYPL )のデジタルギャラリーで鑑賞することが出来る.
 おまけは2002年3月に撮影した NYPL の入り口.この図書館は映画「ゴーストバスターズ」で最初の怪奇現象が現れる舞台となった.

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