2010年12月26日日曜日

マンリョウ

Ardisia crenata 7月に地味な花を咲かせていたマンリョウが多数の真っ赤な実をつけた.つやつやとした深緑色の葉との対比で一層実は目立ち,英名がCoral berryなのも納得.

このように初冬目立つ実をつけるのに,同属のヤブコウジ(十両)がヤマタチバナの名で『万葉集』に登場するのに比べ,文献上の登場は遅い.江戸時代の伊藤伊兵衛『花壇地錦抄』(1695),貝原益軒『大和本草』 (1709),寺島良安『和漢三才図会』(1713頃)などには「センリョウ(珊瑚,仙寥)」はあるものの「マンリョウ」は見つけられなかった.
本格的に園芸化されたのは文化・文政のころ(19C初頭)といわれ(今泉優),小野蘭山の『本草綱目啓蒙』(1803-1806) に白実と共に黄実の名も初めて載る.
巻之九 草之二 山草類下
硃砂根  マンリヨ
花家ニ多クアリ。高サ一尺以来、葉ハ百両金ニ似テ、短ク、辺ニ尖ラザル鋸歯アリ。葉ハ茎端ニ叢リ互生シテ傘ノ如シ。数百ノ円実枝ヲ分チテ葉下ニ倒垂ス。冬春、紅熟シテ観ニ堪タリ。又黄実、自実、其余数品アリ。一種播州及紀州二生ズル者、高サ三四尺ニシテ実少シ。花戸ニテ、シキンジヤウト呼、紀州ニテ、ヤマシキミト云。
江戸の終わりにブームとなり斑(ふ)入りや葉変わりなどが改良され,明治の『硃砂根銘鑑』には53品種が記録されている(湯浅浩史).

光沢のある厚い葉の波状に膨れた部分には共生細菌(Phyllobacterium myrsinacearum Miehe)が詰まった部屋が内部に形成されている(Knoesel (1962))のだそうだ。防疫のため殺菌剤を散布するとセンリョウの成長が阻害されるので,この細菌は宿主にとって有益な働きをしているのだろう.

日本では名前から縁起のよい植物とされ,十両(ヤブコウジ),百両(カラタチバナ),千両(センリョウ)やアリドオシやモチノキと一緒に植えられ,富貴への願いとされるが,ハワイや米国南部(Kaoru Kitajima, 2006)では,観賞用として導入されたマンリョウが鳥によって散布され,原植相に悪影響を与えるとして外来有害植物に指定されている.そういえば,鹿島神宮の参道では,大木の又のところに,鳥の糞から成長したマンリョウを見た(左,2009).

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