2010年5月19日水曜日

クロタネソウ(ニゲラ)『新渡来花譜』「銀鮮花」

Nigella Damascena クロタネソウは欧州南部原産で,江戸時代末期に渡来.『新渡来花譜』には白い八重の花をつける個体が「銀鮮花」として載る.華やかさには欠けるが,種子・葉・花・果実それぞれに興味をそそる.葉は羽状複葉で小葉は糸状に細裂し光沢があり,葉腋から出た枝の先端にそれぞれ直径3cmほどの花を一つつける.がく片は花弁状になり,一重や八重がある.果実は球状に膨らんだ蒴果で,多くの黒い種子が入っている.これが学名,和名の由来.

この種子には芳香があり,矯臭剤として使われる.欧州では民間薬として利尿や腸カタルの治療に用いられたとのことだが,含まれているプロトアルカロイドのdamascenine (2-(Methylamino)-3-methoxybenzoic acid methyl ester) は有毒という報告があるので,大量摂取は危険かもしれない.

一方,良く似たNigella sativa の黒い種は“black cumin (Kalonji)”と呼ばれ,香辛料としてインドやペルシャ料理に良く使われている.この植物の灰青色の花は直径4cmとやや大きく,葉は3回羽状複葉である点が異なる.

引っ越して直ぐに種を買って育て,それから十数年.毎年こぼれ種で春の終わりを彩ってくれている.開花初めは白っぽいが日光に当たると青くなる.一重の方が好ましいが,八重咲きが多くなってきた.おまけは5年ほど前のニゲラ花壇の風景.細かく分かれた葉の霧の中の青い花が,英名の “Love in a mist” にふさわしい.

欧州では広く親しまれ,1890年にイタリアで出版されたドイツの工芸家 A. セダー篇の叢書 "Die Pflanze in Kunst und Gewerbe (The Plant in Art and Trade)" にも多色石版で描かれているので, http://psieboldii.blog48.fc2.com/blog-entry-38.html でご覧ください.

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