2010年5月9日日曜日

セッコク(石斛) 少彦薬根,伊達家の献上品,瑞巌寺セッコク

Dendrobium moniliforme薬用にされることから,記紀神話の医療神である少彦名命(すくなひこなのみこと)にちなみ,少彦薬根(すくなひこなのくすね)の古名も持つ.「花壇地錦抄」 元禄八年(1695) にはそっけなく「葉は笹のようで,草立はトクサのようだ」としか書かれていないが,江戸時代よりの古典園芸植物として,花よりはむしろ葉変わり品が栽培観賞されていた.近年は海外のデンドロビウムとの交配とクローン栽培法で,花の形や色のさまざまな品種も生み出されている.

開花前の全草を乾燥させたものを,漢方では「石斛」の代用として,消炎・強壮・強精薬あるいは美声剤として用いる.「石斛」はホンコンセッコクなどの全草を加工したもので,アルカロイドを含むが,セッコク由来の加工物はアルカロイドを含まないとされる(木村康一ら 原色日本薬用植物図鑑 保育社 1994).

 江戸時代には仙台藩の名産品として伊達家の献上品に扱われていた.昭和30年前後宮城県松島町の瑞巌寺の老杉に着生しているのが確認されたセッコクは有名で,町では育成施設を設け,バイオテクノロジーによる増殖で,「瑞巌寺セッコク」と称し苗を販売している.

 2006年に松島を訪れた時,長い橋を通って渡った福浦島では地面に生えているのを見た.そのとき瑞巌寺で小苗を購入.年々株も大きくなり花もつけるが,年によって花色が白からピンクに変化する.フウランほどではないが,上品で良い香りもする.

 2008年に熊野で入手した苗にもようやく花芽がついた.

 左は Curtis Botanical Magazine(英)1864 石版手彩色のセッコク図譜




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