2010年4月10日土曜日

チューリップ クルシアナ クリサンサ

Tulipa cv. Clusiana var. Chrysantha
  150種類あると言われるチューリップの野生種は,南欧州から中国まで分布するが,その祖先はパミール高原から天山山脈を中心とする地域にあったと思われる. 10世紀頃からオスマン・トルコで栽培され,スレイマン大王(1520~1566年)の時代1554年に,神聖ローマ帝国の大使として宮廷を訪れた西欧人がその花を見たという記録を残し,その時球根や種をウィーンに持ち帰ったとされる.

 このクルシアナという属名に名を残す17世紀初頭の有名な植物学者,カロルス・クルシウス(1526~1606) は,1593年ウィーンからオランダのライデンにチューリップの球根を運んできて,法外な値段をつけて売り出した.それからチューリップはオランダで多く栽培され, 1630年代には A. デュマの「黒いチューリップ」でよく知られるチューリップ熱が蔓延した.希少な品種に対しては「グリフォンやユニコーンを対象にしたほうがまし」と言うほどのとんでもない投機が横行したが,1637年に突然市場が底をつき,数百人が破産したと言う.

 クルシアナ・クリサンサは高さ 15cm 程度のすらりとした原種系チューリップ.外花被の外側が赤橙色,外花被の内側と内花被が黄色のため(左図の左),曇天で花を閉じているときは赤橙色に,晴天で花を開くと黄色が勝ったツートンカラーに見える.

 数年前鉢植えで頂き,そのまま中身を地植えにした.毎年可憐な花を咲かせるが,種ができないのにかなり離れた所から芽が出てくる.不思議だなと思っていたが,今年植え替えをしようと掘ってみたら,球根から出ている根の一本が太くなり,それがランナーの様に地中を伸びてその先が膨らんでいるのを見つけた(左図の右).この膨らみから葉が出て新しい個体になるのであろうか.ならば謎が解ける.栽培品種とは異なる栄養生殖法を身につけているようだ.

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